「分析ソフトを入れたけれど、データが読み込めなくて分析すら始まらない」「用語が難しくてどのボタンを押せばいいかわからない」——easyStatは、そんな「つまづき」をなくすために作られました。
このマニュアルは、専門用語を極力減らし、「やりたいこと」から直感的に機能を探せるようにしています。分析前は「この分析を簡単に説明すると」、実行後は「今回の結果を簡単に説明すると」を開くと、高校生向けの言葉で見る順番、読み違えやすい点、次にすることを確認できます。
3分で始める基本手順
迷ったときは、この順番で進めると大きく外しません。通常の統計計算・テキストマイニング・図表作成はブラウザ内で行い、読み込んだデータをeasyStat独自の分析サーバーへ送信しません。
トップ画面でExcel・CSVを選ぶか、「表を入力」のセルへ直接入力・貼り付けします。練習したい場合はデモデータを使えます。
列名、数値・カテゴリの判定、欠損値の数を見ます。ここで変数の種類が違って見える場合は、先にデータ整形を使います。
わからない場合は「分析サポーター」を開き、候補を確認します。自分で選ぶ場合は次の早見表を使います。
目的変数、説明変数、グループ変数など、画面に表示された選択欄を順に指定します。
実行前の「この分析を簡単に説明すると」では目的と見る順番、実行後の「今回の結果を簡単に説明すると」では結果、指標の意味、注意点、次にすることを確認できます。どの分析でも「問い → データ → 分析 → 解釈」の4ステップで現在地を示します。結果用の説明は画面の数値から自動で表示され、この説明を開くだけで外部通信は行いません。
p値だけで判断せず、平均差、相関係数、オッズ比、効果量、グラフの形も確認します。
- 先に自分で読む:「今回の結果を簡単に説明すると」で、結果の中心を確認します。
- 渡す内容を見る:「AIに渡す内容と説明設定」で、「高校生向け(やさしく)」「標準」「研究・論文向け(詳しく)」を選び、表と要約を確認します。原データは通常含めません。
- 回答を照合する:AIが示した数値とT1などの根拠を、画面の結果表と1つずつ照らします。
AIに頼めること:難しい指標の言い換え、レポート文の下書き、次の確認候補の整理です。
AIだけでは決められないこと:原因、標本が母集団を代表しているか、画面にない調査方法の良し悪しです。
公開版の「AI用テキストをコピー」は、要約統計量、分析手法、結果表、妥当性チェックをブラウザ内で依頼文にまとめます。コピーした時点では外部へ送信されません。同じ内容の重複を避けるため、画面読み上げ用のグラフ説明は依頼文から除外します。内容を確認してから、学校や組織が認めたAIへ貼り付けます。個人情報・成績原票・自由記述などの機密情報は送信しないでください。
成人の教員・研究者がローカル実行する場合だけGeminiへ直接接続できます。キーはページのメモリ内だけに置き、再読み込みまたはページを閉じると消えます。直接接続はInteractions APIを使い、API側の会話保存を無効にしますが、利用プランのデータ利用条件まで変更するものではありません。
入力・図表編集・保存
ファイルがない場合
- トップ画面の「表を入力」で、見出しとデータをセルへ直接入力できます。
- Excelやスプレッドシートで範囲をコピーし、左上のセルへ貼り付けると行列を保って入力できます。
- 矢印キー、Enter、Tabでセルを移動できます。1行目は列名、2行目以降は1人・1件につき1行にします。
- テキストマイニングだけを行う場合は、「直接入力」へ1行1文書で文章を貼り付けることもできます。
図表を整える
- 各図表の「図の表示設定」を開くと、タイトル、軸ラベル、凡例を表示・編集できます。
- 数値軸と日付軸は、「自動」を外すと最小値・最大値を変更できます。ブラケットや有意記号がある図では、注釈が枠内に収まる最大値を下回らないよう自動で保護します。
- 幅、高さ、縦横比を変更し、レポートやスライドに合う大きさへ調整できます。縦横比はプリセットのほか、「任意比率を入力」で横と縦の値を指定できます。
- 「すべての図をまとめて設定」では、共通タイトル、X・Y軸ラベル、軸の最小値・最大値、幅、縦横比、高さを現在表示中の図へ一括適用できます。空欄のラベルと「変更しない」の軸は、各図の値を保ちます。
- 生の観測値がある平均値比較では、「図の表示設定」の表示形式から棒グラフ(平均と標準誤差)と箱ひげ図(中央値、四分位範囲、観測値)を切り替えられます。度数、固有値、自己相関など、箱ひげ図にできない棒グラフには切替を表示しません。
- 軸範囲を狭めると、データの一部が見えなくなったり差が実際より大きく見えたりします。分析時は「自動」を基本とし、手動で変更した場合は保存画像や報告文に範囲を明記してください。
- 画像保存前に、タイトル・凡例・色分けの説明と文字の重なりを確認してください。
- 結果全体を残すときは、ブラウザの印刷機能からPDF保存できます。操作ボタンや入力欄は印刷から除かれ、結果表・解釈・図を中心に配置します。保存前に印刷プレビューで改ページや文字切れを確認してください。
分析選択早見表
「何を知りたいか」から分析を選ぶための表です。まず目的を選び、必要なデータの形が合っているか確認してください。
| 知りたいこと | 使う分析 | 必要なデータ | 見るポイント |
|---|---|---|---|
| データの全体像を知りたい | 探索的データ分析 | 数値 1つ以上 | 平均、中央値、標準偏差、ヒストグラム、外れ値 |
| 2群の平均を比べたい | t検定、マン・ホイットニーU検定、ウィルコクソン符号順位検定 | 数値2群 | p値、平均差、効果量、対応の有無 |
| 3群以上の平均を比べたい | 一要因分散分析、二要因分散分析、クラスカル・ウォリス検定 | 数値グループ | 主効果、交互作用、事後検定 |
| カテゴリ同士の偏りを見たい | クロス集計、カイ二乗検定、フィッシャーの正確確率検定、マクネマー検定 | カテゴリ 2つ以上 | 人数、割合、期待度数、p値 |
| 数値同士の関係を見たい | 相関分析 | 数値 2つ以上 | 相関係数 r、散布図、外れ値 |
| 数値を予測したい | 単回帰分析、重回帰分析 | 目的変数説明変数 | 回帰係数、β、R²、VIF |
| 2択の確率を予測したい | ロジスティック回帰分析 | 2値の結果説明変数 | オッズ比、p値、予測確率 |
| 質問項目をまとめたい | 因子分析、主成分分析、因子得点の算出 | 数値 3つ以上 | 負荷量、寄与率、得点化する項目 |
| 文章や時系列を見たい | テキストマイニング、時系列データ分析 | 文章列時間順の数値 | 頻出語、共起、トレンド、周期 |
結果の書き方
レポートでは「有意だったか」だけでなく、「どちらが高いか」「どのくらい違うか」「どの指標を見たか」を一緒に書くと読みやすくなります。
- 分析に使った人数・欠損値の扱いを確認した
- グラフで極端な外れ値や入力ミスがないか見た
- p値だけでなく、平均差・相関係数・効果量・オッズ比などを見た
- 「差がある」と「関係がある」と「原因である」を混同していない
文章テンプレート
【最重要】正しいデータの作り方
分析ソフトが一番苦手なのは「人間が見るためだけに綺麗に装飾されたExcel」です。
コンピューターが読み込めるように、以下のルールを守ってデータ(Excel・CSV)を作りましょう。
- 1行目は「データの項目名(変数名)」だけを書く
- セルの結合(くっつけること)は絶対にしない!
- 1人のデータは「横に1行」で書く
- 数字の列に「約」や「kg」などの文字を混ぜない!
ダメな例(エラーになります)
| アンケート結果 | 身体測定 | |
|---|---|---|
| ID | 性別 | 体重 |
| 1 | 男 | 約60kg |
| 2 | 女 | |
× 1行目と2行目がタイトルになっている
×「アンケート結果」などがセル結合されている
× 体重に「kg」という文字が混ざっている
正しい例(こちらを目指す)
| ID | 性別 | 体重 |
|---|---|---|
| 1 | 男 | 60 |
| 2 | 女 | 55 |
〇 1行目がシンプルな項目名になっている
〇 単位は含めず数字だけを書いている
〇 1人につき綺麗な1行になっている
「数値データ」と「カテゴリデータ」の違い
easyStatでは、手法を選ぶと「数値変数が〇つ必要」「カテゴリカル変数が〇つ必要」と表示されます。
この2つの違いを勘違いすると、「データを入れたのに分析ボタンが押せない!」というトラブルになります。
量的データ(数値)
「足し算や平均・大小に意味がある数字」です。
- 身長 (160cm, 175cm)
- テストの点数 (80点, 95点)
- アンケートの5件法 (1:全く違う ~ 5:そう思う)
質的データ(カテゴリ)
「グループ分け・名前・記号」のことです。見た目が数字でも、平均に意味がなければカテゴリです。
- 性別 (男, 女)
- 所属クラス (A組, B組)
- 要注意: 「1=男, 2=女」と入力した数字(平均の1.5に意味がないため)
統計用語の基礎:p値と有意差
この先、色々な表で p値 (p-value) という数字が出てきます。p値は、「差や関連がない」と仮定したときに、今回と同じか、それ以上に極端な結果が得られる確率です。結果が偶然だった確率や、仮説が正しい確率そのものではありません。
5%水準で判断する場合
p値 が 0.05 より小さい (p < 0.05) かどうかを探します。
0.05より小さければ、設定した帰無仮説に対して統計的に有意と判断します。これは差や関連の大きさ、実践的な重要性を保証しません。0.05以上でも「差がない」「同じ」と証明されたわけではありません。
分析サポーター
目的:「どの分析が目的とデータに合うかわからない」時に、変数型や条件に基づくルールで候補を提案します。外部AIへデータを送る機能ではありません。
使い方:データを読み込んだら、まずはこれを開いてみてください。「この分析を使う」ボタンでそのまま画面へ移動できます。
- 提案された分析名だけでなく、「なぜ提案されたか」を確認する
- 目的が「比較」なのか「関係」なのか「予測」なのかを自分でも言葉にする
- 提案が複数ある場合は、まず探索的データ分析でデータの形を確認する
データの整形・欠損処理
目的:分析を始める前に、データをきれいにしたり、必要な列だけを抽出したりします。
欠損の扱いを分析前に決め、除外後の有効ケース数を確認します。
| やりたいこと | 使う操作 | 注意点 |
|---|---|---|
| 欠損値を含む行を除きたい | 欠損処理 | 除外後の人数が少なくなりすぎないか確認します。 |
| 特定の条件だけ残したい | フィルタ | 例: 学年が「1年」の行だけ残す、回答済みの行だけ残す。 |
| 逆転項目を直したい | 逆転処理 | 5件法なら「1↔5、2↔4、3はそのまま」のように変換します。 |
| 複数の列から新しい点数を作りたい | 計算・標準化 | 合計点、平均点、z得点などを作ってから分析に使えます。 |
データの結合
目的:「事前テストのファイル」と「事後テストのファイル」の2つを、出席番号などを目印にして1つのファイルにくっつけます。
基準にしたいデータを読み込みます。例: 受講者名簿、事前テスト。
追加したいデータを読み込みます。例: 事後テスト、アンケート結果。
ID、出席番号、メールアドレスなど、両方のファイルに共通して入っている列を選びます。
列が多い場合は、データプレビューを横スクロールして、結合された列が正しく並んでいるか確認します。
因子得点の算出
目的:「Q1, Q2, Q3...」というアンケートの点数を足し算して、「総合満足度」のような新しい列(得点)を作ります。
- 同じ尺度の項目だけをまとめる
- 逆転項目がある場合は、先に逆転処理を済ませる
- 合計点にするか平均点にするかを研究計画に合わせる
探索的データ分析・グラフ (EDA)
目的:点数の平均が何点か、ばらつきはどのくらいかなど、まずは手持ちのデータの全体像と形を見たい。
結果の見方
ボタンを押すだけで、ヒストグラム(山の形)、箱ひげ図、平均値などの表が一気に出力されます。異常な値が入っていないかのチェックにも使います。
- 平均値と中央値が大きくズレていないか
- 標準偏差が極端に大きくないか
- 箱ひげ図で外れ値が多すぎないか
- 欠損値が分析対象に偏っていないか
2つのグループを比べる (t検定 / U検定)
目的:「男性と女性」「A組とB組」など、2つのグループで点数の分布や平均に差があるか調べたい。
どれを使えばいい?
- 対応なし t検定: 別々の対象からなる2群(男女など)の平均を比べます。点数の列 と 群の列 を選びます。
- 対応あり t検定: 同じ人たちの「事前テストと事後テスト」を比べるパターン。事前点数 と 事後点数 を選びます。
- t検定の95%信頼区間: easyStatの結果表では「平均差」の区間です。Cohenのdやdzの信頼区間ではありません。0をまたぐかどうかと区間の幅を、p値・効果量と一緒に確認します。
- 複数項目・複数ペアを一度に検定する場合: easyStatは未補正p値とHolm補正後のp値を併記し、判定・解釈・グラフの記号には補正後p値を使います。どの検定を同じ検定群に含めたかも報告します。
- マン・ホイットニーのU検定(ノンパラメトリック): 独立2群を順位に置き換えて分布の位置を比較します。分布形状が大きく異なる場合は、単純な中央値差として解釈しません。
- ウィルコクソン符号順位検定: 同じ人の事前・事後を比べたいが、差の分布が偏っている時に使います。
迷ったら: 「別々の人を比べる」のか「同じ人の前後を比べる」のかを先に決めてください。ここを間違えると、結果の意味が変わります。
3つ以上のグループを比べる (分散分析 / K-W検定)
目的:「A組、B組、C組」など、3つ以上のグループで点数に差があるか調べたい。
どれを使えばいい?
- 一要因分散分析 (ANOVA): 1つのグループ変数で3群以上の平均を比較します。点数の列 と クラスの列 を選びます。
- 二要因分散分析: 「勉強法(A/B)」×「性別(男女)」の2要因について、主効果と組合せによる交互作用を検討します。
- クラスカル・ウォリス検定(ノンパラメトリック): 独立3群以上を順位で比較します。
結果の見方: まず分散分析表の p値 で「どこかの組に差がある」ことを見つけます。その後、下に出てくる「事後検定(多重比較)」の表を見て、「具体的にA組とC組の間に差がある」という結論を出します。
アンケートの偏りをみる (クロス集計 / カイ二乗)
目的:「性別(男女)」によって「きのこ/たけのこ派」の割合に違いがあるか?を調べたい。
どれを使えばいい?
- クロス集計: まずは「男性の犬好きは何人?」のように人数の内訳(表と帯グラフ)を出したい時。
- カイ二乗検定: 観測度数と、独立を仮定した期待度数のずれから、カテゴリ間の関連を検定します。2×2表ではYates補正を主結果とし、R×C表のセル判定にはHolm補正後のp値を表示します。
- フィッシャーの正確確率検定: 小さいセルがあり、カイ二乗検定の期待度数の条件を満たしにくい時に使います。特に2×2表では近似を使わないp値を求められます。
- マクネマー検定: 同じ人たちの「賛成・反対」が、イベントの前後でどう変化したかを調べる時に使います。
関係性を調べる (相関分析)
目的:「身長が高い人ほど、体重も重いか?」のように、右上がりの関係か、右下がりの関係かを調べたい。
見方: 相関係数 (r) という数字(-1から1の間)を見ます。1に近いほど強い正の相関(連動して増える)、-1に近いほど負の相関(一方が増えれば減る)です。
結果を説明・予測する (回帰分析)
目的:「勉強時間」や「過去の成績」と「テストの点数」の関連を数式で表し、条件を与えたときの値を予測したい。
どれを使えばいい?
- 単回帰分析: 説明変数(X)が1つ、数値の目的変数(Y)が1つの場合。(例: 勉強時間とテスト点数)
- 重回帰分析: 説明変数(X)が複数ある場合。標準化偏回帰係数(β)は、他の変数を一定とした標本内の関連を尺度をそろえて比較する目安です。
- ロジスティック回帰分析: 結果(Y)が「合格/不合格」のような2択(カテゴリ)の場合。その確率を予測します。
たくさんの情報をスッキリまとめる (因子 / PCA)
目的:たくさんの質問項目を、「文系力」「理系力」といった見えないテーマでまとめたり、総合的な新しい指標を作りたい。
どれを使えばいい?
- 因子分析: 「国・数・英…」の点数から背後に潜む力(国語と英語ができる人は「言語能力因子」が高い傾向)を発見します。主にアンケート分析で使います。
- 主成分分析 (PCA): 全ての点数をギュッと圧縮して、「総合評価点」という1つの軸を作りたい時などに使います。
使い分け: アンケートの背後にある「見えない性質」を探すなら因子分析、たくさんの数値を少ない総合指標に圧縮するなら主成分分析が向いています。
時系列 / テキストマイニング
- 時系列データ分析: 「1年間の毎月の売上」など、時間経過のトレンドや周期を見ます。数値が必要です。
- テキストマイニング: テキスト列を選ぶか、「直接入力」に1行1文書で文章を入力します。出現頻度、文書頻度、TF-IDF、品詞別ランキング、KWIC、共起を確認できます。
テキスト結果の読み方
- 頻度ワードクラウドの大きさは出現回数、TF-IDFワードクラウドの大きさは文書を特徴づける度合いです。
- 語の色は品詞を表します。画像下の凡例で、名詞・動詞・形容詞などを確認します。
- 共起ネットワークは、同じ文または文書に現れた語のJaccard係数を表示します。「強い順」か「係数の下限」で線を絞れます。線があるだけで意味的・因果的な関係があるとは限りません。
- カテゴリ列を指定すると、カテゴリごとのワードクラウドと共起ネットワークが連続表示されます。各群の文書数が大きく異なる場合は、頻度だけでなくTF-IDFと原文も確認します。
- ノードや語を選び、KWICで前後文脈を読んでから解釈します。
- 時系列は、日付や月の順番が崩れていないか確認する
- テキストは、空欄だけの行や同じ文章の重複を確認する
- 自由記述の個人情報は、必要に応じて事前に伏せ字にする
よくあるトラブル・FAQ
いったんExcelを開き、1行目に項目名、2行目以降にデータという最もシンプルな形になっているか確認してください。
たとえば「t検定」なら、数値を1つ、カテゴリを1つ(または数値を2つ)リストから選んで青く反転させる必要があります。
Excelに戻って、該当する列がすべて半角の数字だけになっているか確認してください。
ノンパラメトリック手法は順位などを使い、分布への仮定を比較的少なくする方法です。ただし、常に安全・高性能という意味ではなく、研究目的とデータの形に合わせて選びます。